小池百合子「ワタシ、ひらめいちゃった」…東京の水道基本料金無償化「選挙前のバラマキ」批判に“知事の右腕”が大反論

東京都は物価高による家計の負担を軽減しようと、ことしの夏以降に限った臨時的な措置として、水道の基本料金を無償とする方針を決めた。報道によると、検針の時期によって6月から9月、または7月から10月の4か月間、都内すべての一般家庭の水道の基本料金が無償になる。物価高などが国民生活を圧迫している中で、都民にとって水道料金の値下げは嬉しい一方、「選挙前恒例のバラマキだ!」という批判も根強い。それもそうだ、東京都議会議員選挙は来月13日に告示され、22日に投票が行われる。一体なぜこのような政策に打って出たのか。どんな経緯があったのか。どうして水道料金なのか。小池百合子都知事の“右腕”、都民ファーストの会幹事長・尾島紘平氏が裏側を暴露するーー。連続インタビュー全2回の第1回。
目次
これってつまり、水道使い放題ってことなのか
――これはつまり、今年の夏は家で好きなだけ水を垂れ流してもいいってことですか。
(都民ファ幹事長・尾島紘平氏、以下同)
やめてください。
そもそも水道の料金のうち、基本料金の部分を免除するというものです。水道料金は基本料金と従量料金で構成されていて、無料化されるのは「基本料金」の部分のみですよ。でも、家庭によっては千数百円くらい安くなります。
あなたのように、一部で「水道使い放題」と勘違いされている方はいますが、あくまで使用量に応じた従量料金は通常通り請求されます。水を流しっぱなしにしたら、それは駄目ですからね。
――そもそもなぜ水道料金の基本料金を無料に?
まず物価高騰対策です。お店に並んでいるおコメの価格もそうだし、水道・光熱費も全部高くなっています。その影響で都民の生活は圧迫されており、それを少しでも緩和する目的があります。
もう一つは熱中症対策です。一見、水道料金と熱中症の関係性が見えにくいかもしれませんが、実はここに小池都知事の狙いがあるんです。夏になると熱中症アラートが出て、救急車の逼迫警報も出ます。熱中症で亡くなる人の9割が高齢者で、そのうちの9割が室内、さらにそのうちの9割がエアコン不使用なんです。
高齢者がエアコンをつけない理由は「電気代が高いから」という節約意識です。そこで小池さんがひらめいたのが、水道代を下げたからその分エアコンを使ってくださいよというメッセージをセットで出せるということなんです。
高齢者にエアコン使ってほしいなら電気代補助するべきでは
――熱中症対策なら、直接電気代を補助すればいいじゃないですか。
電気・ガスに関しては東京都の管轄ではないんです。電気・ガスは東京電力、東京ガスですから。さらに国が実施している電気料金の補助制度との二重補助にもなってしまいます。動くにしても時間がかかる上、もう今年の夏も差し迫っています。
そんな中、水道だったらすぐに下げられるんです。東京都の判断で。
――電気代補助という名目で現金給付する方法もあるのでは。
現金支給をすれば事務手続きのコストが膨大になるという問題もあります。その事務コストが、今回の水道料金を下げるだけであれば、東京都水道局が徴収する料金の基本料金分を0に書き換えるだけ。全部で今回かかる事務コスト6000万円くらいです。
一方、現金給付をするなら事務コストが何倍、何十倍とかになったりします。コスト面でも水道料金無料化の方が優位性があるんです。
そもそもこれ、選挙前の「ばらまき」ですよね
――そうはいったって、これ、選挙前の「ばらまき」ですよね。
水道料金無料化のタイミングについては、6月議会に間に合わせる必要がありました。今回の6月議会にかけないと夏に間に合わないんです。もっと前から政策を発表することもできなくもなかったのかもしれませんが、知事としては都民にとっては一石二鳥となるような形で実施したかったはずです。
また、そもそも歳入を減らしているんだから、ばらまきではないんです。昨今日本で批判されているのは、どうせ補助金や現金給付でばらまくのだったらそもそも税金で金をとるなよ、というものかと思います。それはその通りだと思っていて、集めてばら撒いているだけではなく、そこには事務コストが発生しています。なので、今回の水道料金を下げるというのは、そもそも「取らない」という発想なんですよ。
さらに、熱中症対策としての啓発効果も大きいと思います。エアコンを使ってくださいというメッセージをキャンペーンCMで打ったら6000万円以上かかります。それが事務コスト6000万円で実現できるわけです。
ただ、そう説明したところで「バラマキだ」という批判は絶対に止められないと思っているので、ある程度はそういう批判があっても言わせておけばいいかなと思っています。
小池百合子「わたし、ひらめいちゃった」
――この政策はどのように生まれたのですか?
小池都知事が「わたし、ひらめいちゃった」ということなんでしょう。
もともとこの水道料金の提言という政策について、私も実現できないものかと悩んでおりました。今回は物価高、国民が求める減税を求める動きも相まって、このタイミングでの実施となりました。
知事として解決しなければいけなかった夏の熱中症対策、その根本原因が夏の光熱費であり、しかも今物価高騰でエネルギーが上がってしまっている状況に対して、どういう政策を打てば都民が喜ぶ方法で解決できるかと考え、小池知事がこの政策を思いついたのです。
ただし、水道料金引き下げについては、過去に公明党さんを含め各会派から要望があったんです。みんな言っていたと言えば言っていた。だから各会派がSNSなどで「私たちが要望していた!」と相ついで投稿したのですね。でも、こういう一石二鳥、三鳥を狙うような感じで政策を出してくるとは思っていなかったので、私にとってもサプライズでした。
そもそも「都議会各会派からの要望を受けて……」と立て付けを整えるのが毎回の議例的なものです。前日とかに与党3会派から要望か来たら、「もうこれはやるんだな」と記者クラブのメディアも気づくような感じですよね。
今回は補正予算の発表会議で小池知事が公式に表明した形です。繰り返しますが、都議会議員や都民ファーストにとっても「サプライズ」でした。一石二鳥三鳥を狙うような感じで出てくるとは思ってなかった。一政治家として小池都知事のやり方には「マジでなるほどなぁ」って思いましたね。
物価高対策としての側面と国への影響
――物価高対策としての側面はどうですか?
また、この政策が国に与える影響も大きいと思います。東京都がこれをやると言ったので、多分国も反応してきています。国は東京都にこういうことを先にやられると嫌がります。国と比べると東京都はこういった施策をすぐ実行に移せてしまいますが、国でやろうと思ったら各電力会社や各ガス会社との調整もしなければならないですし、時間がかかってしまうのですね。
でも、東京の動きに刺激を受けて、既に刺激されて多分動いていると思います。水道料金の基本料金を無償化する施策を東京都が打ちだしたことで、「電気料金も夏場だけ少し下げなきゃいけない」というような、国に対するプレッシャーにもなったのではないかと思います。